世界で最も美しい駅?アントワープ中央駅の見どころ紹介

今回の記事では、世界一美しい駅のひとつとして知られるベルギーのアントワープ中央駅について紹介します。

基本情報

アントワープ中央駅の外観

アントワープの玄関口であるアントワープ中央駅(Antwerpen Centraal Station)は、ベルギー国内外への鉄道ネットワークの主要ハブとして機能しています。現地ではMiddenstatieという愛称で呼ばれることがあり、これはオランダ語で「中央駅」を意味します。

中央駅は交通ハブとしての役割のみでなく、その壮大な建築様式により観光名所としても人気です。駅舎の豪華で細部にわたる装飾は、宗教建築に匹敵するほどの壮麗さを誇り、「鉄道の大聖堂 (蘭: Spoorwegkathedraal、英: Railway Cathedral)」とも称されています。

中央駅は美しいデザインと歴史的価値から多くの賞を受賞しています。旅行雑誌やウェブサイトのランキングでは、世界で最も美しい駅の一つとして頻繁に取り上げられています。

中央駅は1905年に開業し、その後、20世紀後半から大規模な改修・拡大工事が行われました。工事が完了した2009年には米紙Newsweekの世界の壮大な駅ランキングで第4位に選出されています。

他にも、2014年には米紙CNNの世界の素晴らしい11駅に選ばれています。ちなみにこの11駅には、ベルギー・リエージュのLiège-Guillemins駅も含まれています。2024年には英紙The Timesの世界で最も印象的な7駅にもランクインしています。

見どころ

市街地から向かうと見えてくる中央駅

建物の外観は駅舎というよりも教会や大聖堂と言われる方がしっくりきます。

そんな駅舎はエントランスホールとプラットホーム部の二つの部分で構成されています。

エントランスホール内の豪華な階段

エントランスホールはベルギー・ブルージュ出身の建築家ルイ・デラセンスリー(Louis Delacenserie)の設計で、1899年から1905年にかけて建設されました。大理石など20種類以上の石材をふんだんに使用した豪華な内装や装飾によって、教会や大聖堂のような荘厳な雰囲気が醸し出されています。

駅舎は複数の建築スタイルが融合された折衷主義様式ですが、主要な様式はネオバロック様式です。19世紀後半から20世紀初頭にかけて流行したネオバロック様式の特徴である壮麗な装飾、対称性の取れたデザイン、巨大なドームと円柱、大きなホールや階段、豪華で多様な素材の使用が駅のファサードや内部装飾に表れています。

ホール中央にある巨大なドームは高さ75メートルで、その壮大さはまるで大聖堂のようです。Delacenserieはローマのパンテオンからインスピレーションを得てドームを設計したと言われています。

中央に見えるのが高さ75メートルのドーム

プラットホーム部分は1895年から1899年にかけて鉄道技術者クレメント・ファン・ボガード(Clément Van Bogaert)によって設計されました。鉄とガラスで構成された屋根の大きさは高さ43メートル、長さ186メートル、横幅66メートルに及びます。

ガラス製のファサードを通して駅舎内に取り込まれた自然光が、駅全体に明るく開放的な印象を与えています。バルコニーからは駅全体を見渡すことができます。

バルコニーから見た駅

主要都市からのアクセス

中央駅は合計4つのフロアに分かれています。元々のプラットホームは地上階のみでしたが、地下には国際列車および高速列車のために増設されたプラットホームがあります。

国内線のほか、パリやアムステルダムへ向かう国際線も停車します。アントワープ中央駅までの所要時間はブリュッセル中央駅から約40分、アムステルダム中央駅から最速1時間25分ほど、パリ北駅から最速約2時間5分です。

22番線のアムステルダム中央駅行きや23番線のパリ北駅行きなど国際線も停車します。

歴史

世界初の鉄道は産業革命に成功したイギリスによって1825年に運行された蒸気機関車ですが、実はヨーロッパ大陸で初めての鉄道はベルギーで運行されました。

ベルギー独立革命によって1830年にベルギーはネーデルラント連合王国(現在のオランダとベルギーとルクセンブルク)から独立しました。その後1835年の5月5日に大陸ヨーロッパ初の公共鉄道路線としてブリュッセルとメヘレン(Mechelen)間の鉄道が開業しました。メヒレンはブリュッセルとアントワープのちょうど中間点に位置している都市です。

翌1836年に鉄道は延伸され、アントワープ駅はブリュッセル-メヘレン-アントワープの終着駅として建設されました。しかし、当時は質素な木造の駅舎であり、臨時駅として設計された駅の名称はボルゲルハウト駅(Borgerhout Station)でした。

アントワープ駅が現在の場所に建設されたのは19世紀末のことです。鉄道開業の年に生まれたベルギー第2代国王レオポルド2世の命によって新たな駅舎の建設が1895年に始まり、1905年に完了しました。その際にアントワープ中央駅という名称が付けられました。

その約100年後の1990年代に再び大規模な改修・拡張工事が行われました。この工事は利用者の増加や国際高速鉄道の導入に対応するとともに、近代的な設備への改修を目的に行われました。

大きな変化がトンネルおよび新たな地下プラットホームの建設です。中央駅とアントワープ・ベルヘム駅(Antwerpen-Berchem)間を結ぶ3.8キロのトンネルがアントワープ市街の地下に建設されました。それに伴い駅は垂直方向に拡張され、地下にプラットホームが増設されたことで現在の4層構造になりました。

以前の中央駅は終点の駅であり、列車は折り返すか迂回する必要がありましたが、地下にできたトンネルによって駅を通過できるようになりました。アントワープ中央駅が終着駅ではなく通過駅としても機能するようになり、国際的な鉄道ネットワークとの接続が強化されました。

2009年に工事が完了して以降、アントワープ中央駅は数々の媒体で世界一美しい駅のひとつとして紹介され、アントワープの人気観光名所のひとつになっています。