「ブラボーの伝説」にも登場するアントワープ最古の建築物・ステーン城

このページでは、ブラボーの伝説にも登場するベルギー・アントワープ最古の建築物であるステーン城について紹介します。

基本情報

ベルギーのアントワープにあるステーン城(Het Steen)は市内で最も古い城壁の一部であり、長い歴史を持つ建築物です。かつてステーン城は大きな要塞の一部でしたが、その大部分は消滅し、現在残っている城壁は11~12世紀のものとされています。

「Het Steen」という名称の「steen」はオランダ語で「石」を意味しますが、「要塞」や「宮殿」を指す言葉としても使われていました。同じくベルギーのゲントにある「フランドル伯の城(Gravensteen)」もこの「steen」の名を持つ城の一例です。

ステーン城。建物へ続く橋の入り口にあるのはランゲ・ワッパー(Lange Wapper)の像。

ステーン城は、長い歴史の中で数々の用途で使用されてきましたが、2021年に完了した工事を経て、アントワープの観光拠点として生まれ変わりました。観光案内所やお土産ショップの設置のほかに、アントワープの歴史に関する展示があり、さらにクルーズ船のターミナルとしても機能しています。

アントワープは、オランダのロッテルダムに次ぐヨーロッパ第2の港湾都市であり、多くのクルーズ船が寄港します。ステーン城にクルーズ船のターミナルが併設されたことで、街とは離れた場所に位置することの多い他のクルーズ港とは異なり、乗客はアントワープの中心部まで徒歩でアクセスできるようになりました。

ステーン城の屋上には、無料で利用できるテラスがあり、アントワープの街並みや港、スヘルデ川の雄大な風景を一望できます。テラスへはエレベーターまたは階段で上がることができます。

屋上テラスから見たスヘルデ川

何世紀にもわたる変遷

ステーン城は長い歴史の中でさまざまな役割を果たしながら、時代ごとに幾度も変遷を遂げてきました。

現在のステーン城の周辺には、9世紀にはすでに城壁に囲まれた集落が存在していました。11世紀には最初の石造りの城壁が建設され、ベルギー・トゥルネー産の石灰岩が使用されました。現在もステーン城の土台部分には、この時に使われた石灰岩が残っています。

ステーン城は、4世紀から刑務所として使用され始め、その後も製材所、魚の倉庫や博物館など、さまざまな用途で使用されてきました。

1520年、神聖ローマ皇帝カール5世のもとで大規模な改築が行われ、この建物は「’s Heeren Steen(王の石の城)」と呼ばれるようになり、後に「Het Steen(石の城)」として知られるようになりました。1549年にカール5世はステーン城をアントワープ市に寄贈しました。

その後、ステーン城は一度オランダ政府の所有となり、製材所として使用されましたが、1842年に再びアントワープ市のもとに戻りました。

1864年からは考古学博物館として使用され、1950年代には考古学博物館から海洋博物館へと変わりました。2008年に海事博物館としての営業が終了し、コレクションは2011年にアントワープに誕生したMASに移されました。

最新の修復・改築工事

2016年、フランドル政府建築家による公募で、ステーン城の改築案としてnoAarchitectenというベルギーの建築設計事務所のデザインが選ばれました。

彼らは「元の形に戻す」「大きく変える」のではなく、ステーン城がその歴史を通して絶えず変化してきたように、過去の積み重ねを生かしながら建築を進化させることを重視しました。

例えば、外側のファサードは以前の城壁のパレットに沿った色のレンガで作られました。下部は暗い色を基調とし、上部に向かって明るい色に変化しているのは数世紀にわたる工事の結果であり、増築部分にもこのグラデーションが取り入れられています。このように新しい増築部分は、色や素材の面で旧部分との調和が図られています。

工事は2018年5月に開始され、2021年秋に工事が完了し、建物はアントワープ市の観光拠点いう新たな形で開業しました。

ブラボーの伝説にも登場

ステーン城はアントワープに伝わるブラボーとアンティゴーンの伝説に登場します。

伝説によると、アンティゴーン(Antigoon)はアントワープに住んでいた巨人で、スヘルデ川を通る船から通行料を徴取していました。彼の要求に従わない者には右手を切り落とし、川に投げ捨てていたとされています。

このアンティゴーンが住んでいたのがステーン城と伝えられています。

ある日、ローマの戦士ブラボー(Brabo)がアンティゴーンに立ち向かい、巨人を討ち倒しました。そして、アンティゴーンが行っていたのと同じように、その右手を切り落としてスヘルデ川に投げ捨てたとされています。

アントワープ市庁舎の前には、この伝説をモチーフにした「ブラボーの噴水」があり、巨人の右手を投げるブラボーの姿をした像が街のシンボルとなっています。

最後に

アントワープへ観光に行った際の様子をYoutubeにアップしていますので、興味があればご覧ください。