ルーヴル美術館の「アルルのヴィーナス」が発見された古代劇場

この記事では、南フランス・アルルの古代劇場について紹介します。パリのルーヴル美術館に展示されている彫像アルルのヴィーナスが発見された地でもあります。

基本情報

南仏アルルの「古代劇場」は、アルルの円形闘技場とほぼ同時期の紀元前1世紀末に建造されたローマ時代の劇場です。英語ではRoman Theatre of Arles、フランス語ではThéâtre antique d’Arlesです。

円形闘技場は戦いの場でしたが、古代劇場で観客に披露されたのは演劇でした。ローマやギリシャの喜劇、悲劇、パントマイムなどが、主に上流階級の人々に向けて催されました。富裕層や権力者が舞台の近くに座り、その後ろにさまざまな社会階層の人々が座っていたと考えられています。ここ古代劇場では現在でも毎年コンサートがおこなわれ、今なお劇場としての役目を果たしています。

劇場は円形劇場の形式を採用しており、半円形の観客席が舞台を囲んでいます。大きさは直径102メートルで、以前は33列の座席があり、1万人程度を収容できたと推定されていますが、現在の収容人数はその半分以下となっています。

舞台上から見たオーケストラ部分と座席

円形闘技場が素晴らしい保存状態で残っているのとは対照的に、古代劇場は時代の経過と共に多くが破壊されました。現在では、舞台部分、オーケストラ部分、客席のほか2本の円柱のみが残っています。この大理石の柱は当時100本以上あったとされていますが、残っているのは数本の柱の切り株と2本の完全な柱だけです。

舞台後方に残る2本の円柱

1981年に円形闘技場などと共に世界遺産「アルルのローマ遺跡とロマネスク様式建造物群(Arles, Roman and Romanesque Monuments)」のひとつとして登録されました。

アルルのヴィーナスの発見

アルルの円形闘技場と同様、紀元前1世紀末のローマ皇帝アウグストゥスの時代に建設されました。アルルはローマ帝国の植民都市として栄え、この劇場もローマの都市計画の一環で建設されました。

やがてローマ帝国の衰退と共に、アルルの古代劇場も次第にその役割を失っていきます。5世紀以降には採石場として利用され、石材が他の建物を建設するために利用されました。

さらに中世には劇場の遺構が埋もれてしまい、要塞や宗教的な用途に転用されました。劇場の一部は、キリスト教の礼拝施設としても使用されたと考えられています。。

17世紀に劇場の遺跡が再発見され、その後、考古学的な調査や発掘が進められました。多くの彫像や建築の遺物が発掘され、発見された遺物の多くはアルル古代博物館に展示されています。

中でも有名なものは、1651年に発見されたローマ時代の彫刻「アルルのヴィーナス(Venus of Arles)」です。この彫像はバラバラの状態で発見されたにもかかわらず、その美しさと芸術的価値から高く評価され、現在はパリのルーヴル美術館に展示されています。アルルの歴史と文化を象徴する重要な遺物として像の複製がアルルの市庁舎内に飾られています。

アルルの古代劇場は、修復作業によって復元され、今日まで残されています。今でも古代劇場では様々な祭典やコンサートなどが行われています。

アクセス

最後に

アルルへ観光に行った際の様子をYoutubeにアップしていますので、興味があればご覧ください。