この記事では、オランダ・ロッテルダム近郊にあるキンデルダイクの風車群の歴史や行き方などを紹介します。
オランダと風車の歴史
世界的に有名なオランダの風車ですが、風車の発達はオランダの地形や歴史と深く関係しています。
オランダの国土は主に低地であり、国土のおよそ4分の1が海面下に位置しています。
ちなみに、オランダという国名はオランダ語で「低地の国」という意味合いを持ちます。オランダは英語で”Netherlands” ですが、オランダ語で “Nederland” と表記されます。”Neder”は「低い」を、”land”は「土地」を意味するため、合わせて「低い土地」という意味になります。
国土の多くが海抜の低い地域にあるため、洪水や湿地の拡大が問題となり、オランダ人は数世紀にわたって水の管理技術を発展させてきました。
風車は風の力を利用して水をくみ上げ、排水路や運河に水を排水する役割を果たします。これにより低地を干拓し、農地や居住地を拡張してきました。
その歴史から「世界は神がつくったが、オランダはオランダ人がつくった(God created the earth, but the Dutch created the Netherlands)」と言われています。オランダの国土の多くが人工的に造られたものであり、水管理や干拓によって形成された土地が多いことを指しています。
風車の役割は排水のみではなく、製粉にも利用されてきました。風車の回転によって石臼や製粉機などの製粉装置が駆動し、穀物が砕かれて粉になります。また、風車内部は住居になっており、風車守という管理者が暮らしていました。現在も風車に住んでいる事例は稀ですが、風車の修復や歴史の伝承のためにメンテナンスをしている人々がいます。
オランダでは水車も古くから利用されてきました。風車と同様に水の排水に使用され、風車よりも静かで安定した動力源として利用されました。
2017年にはオランダの「風車守の風車と水車の運転技術(Craft of the miller operating windmills and watermills)」がユネスコの世界無形文化遺産に登録されました。
現代のオランダでは、風車や水車の主な用途は発電や観光になっています。しかし、これらの建造物は今でもオランダの風景に根付き、多くの人々に親しまれています。
キンデルダイクの風車群
オランダの多くの地域と同様に、キンデルダイクも海面下にあります。そこで風車網を建設し、水面が一定の高さに到達した際に風車のポンプを利用することで水面の維持を図りました。
キンデルダイクでは運河に沿って並んだ19基の風車を見ることができ、この風車網はオランダ最大規模です。毎月第一土曜の午後には「風車の日(Windmill day)」として、19基の風車が一斉に回されます。
オランダ人の水の管理技術への貢献が反映された広大で特徴的な景観を維持していることから、1997年に「キンデルダイク=エルスハウトの風車網(Mill Network at Kinderdijk-Elshout)」としてUNESCOの世界文化遺産に登録されました。キンデルダイクと呼ばれる以前は、この地域はエルスハウトと呼ばれていました。
ちなみにキンデルダイクとは「子供の堤防」という意味です。”Kinder”は「子供」を意味し、”dijk”は「堤防」を指します。名前の由来にはいくつかの説があり、最も有名なものは1421年の大洪水で赤ちゃんの眠るゆりかごが流れ着いた伝説が元になったという説です。
キンデルダイクへの行き方
キンデルダイクはオランダ第二の都市ロッテルダムの南東約15 kmほどのところに位置しています。
ロッテルダムからキンデルダイクへは水上バスで約40分で行くことができます。
ロッテルダムでの水上バス乗り場はエラスムス橋のすぐ近くにあります。ロッテルダム中央駅からエラスムス橋への所要時間はトラムで10-15分、歩いて約30分です。
水上バスのチケットは前日に公式サイトで購入し、往復で9.6ユーロ(=1,565円、1ユーロ=163円で換算)でした。チケットは乗船後に船内で確認されました。購入後にメールで送られてきたチケットのQRコードを見せましたが、チケットを印刷して持参しても大丈夫です。
チケット購入の際には乗る時間を指定する必要はなく、日にちの選択のみで好きな時間に乗船可能です。ただし、水上バスの本数はあまり多くありません。曜日や時期によっては異なるかと思いますが、私が行った3月末の土曜日の水上バスは1時間40分おきでした。
キンデルダイクの風車群を観光
キンデルダイクでは19基のうち2基の風車が一般公開されています。敷地内を歩くのは無料ですが、風車内部の見学は有料です。
風車内部見学のチケットは19.5ユーロ(=3,179円、1ユーロ=163円で換算)でした。チケットには2基の風車内部見学のほかにボートツアー、ポンプ場見学、音声ガイドが含まれています。チケットは入り口のビジターセンターで購入しました。
私は音声ガイドを聴きながら敷地内を観光しました。今回は使いませんでしたが、ボートツアーでは風車の横を通る運河の上から風車を間近に見ることができます。
内部見学が可能なネーデルワールト保存風車です。1738年に建設されました。
ネーデルワールト保存風車は何世代にもわたってHoek家の人々によって運営されてきました。内部にはHoek家のアルバムから取り出した当時のモノクロ写真が展示されています。また、製粉用の粉砕機なども見学できます。
かつてはHoek家の子供が10人以上住んでいました。「子供の堤防」という意味のキンデルダイクの名前の由来として、多くの子どもたちがこの地域の風車を手伝っていたためという説もあります。
続いて内部見学が可能な二つ目の風車であるブロクヴィール保存風車です。こちらは1630年に建設され、キンデルダイクの他の風車よりも100年以上古いです。
風車内部には木靴が展示されていました。オランダを象徴するアイテムとして有名な木靴もオランダの歴史と密接に関わっています。
干拓によって土地を開発してきたオランダでは、耐水性の高い木靴が湿地帯での作業に適していました。
また、丈夫で断熱性が高いことから、水や泥、釘などの鋭利なものから足を守り、温度を保ってくれる木靴は、農作業の時などに重宝されました。
木靴が安かったことも普及した理由の一つです。高い耐久性に加え、材料の木材は革よりも安いため、都市部の人々が当時履いていた革靴と比べて木靴の方が安価でした。
キンデルダイクの観光を終え、水上バスでロッテルダムへの帰路につきました。私は行きも帰りも船内の座席に座れましたが、後から乗ってきたお客さんで席ではなく床に座っていた方もいました。そのため、出発時刻ギリギリに乗り場へ行かない方が良いと思います。
キンデルダイクの観光の様子は下記のYoutubeにもアップロードしていますので、興味のある方はぜひご覧ください。
最後に
ロッテルダムから往復で1時間30分近くかかりますが、オランダの風車が立ち並ぶ壮大な景観を見ることができ、キンデルダイクまで足を運んだ甲斐がありました。普段は何基の風車が稼働しているかはわかりませんが、この日は一基の風車が回っている様子を見ることができ良かったです。
唯一の心残りは天気です。今回行ったのは2024年の3月30日ですが、写真を見ていただいてわかるようにずっと曇り空でした。次回は青空の下で19基すべての風車が回っている様子を見たいです。
最後まで読んでいただきありがとうございました😊