ヨーロッパ博士課程留学の3つの魅力

この記事ではヨーロッパの博士課程(PhD課程)留学の魅力を3つ紹介します。

私は2023年の3月に日本で修士号を取得し、その年の5月にベルギーのKU Leuvenで博士課程をスタートしました。専攻は化学・材料科学です。
ヨーロッパの中でも国や大学、専攻によっては今回紹介する内容が異なる場合があるためご注意ください。

給与

ヨーロッパでは給与がもらえる

ヨーロッパの博士課程では給与がもらえます!

給与額は国や大学によって異なりますが、月2,000〜3,000ユーロ程度(1ユーロ=155円で換算すると31〜45万円)と一人暮らしであれば生活に困ることはない金額です。ただしイギリスについては給与体系が異なるのでご注意ください。

自分で生活費を稼ぎながら研究ができる、これがヨーロッパ博士課程の魅力のひとつです!

なぜ給与がもらえるのかというと、博士課程の学生は大学と雇用契約を結ぶためです。大学に雇われながら研究活動をすることで給与が支給されます。雇用契約は大学と結びますが、給与は指導教員の研究費から支払われます。

このようにヨーロッパ博士課程では学生でありながら研究員として扱われます。バスなどの通学(通勤)にかかる費用は補償され、毎月の給与のみならずボーナスもあります。学生よりも社会人の方が認識としては近いです。

大学から給与がもらえるメリットの一つは、為替変動に影響されないことです。日本の財団から奨学金をもらって留学する場合、円で支給されることが多く、為替レートによって実質的な給付額が変化してしまいます。一方、大学からの給与はユーロなどの現地通貨で振り込まれるため、円安による影響を受けることなく安心して生活できます。

さらにヨーロッパの博士課程では学費・授業料はほとんどかからず、大学によっては学費ゼロの場合もあります。私の通うKU Leuvenの学費は、初年度と最終年度にそれぞれ約500ユーロずつです。

日本では給与がなく学費がかかる

日本の博士課程では給与はもらえず、さらに学費を納める必要があります。年間の授業料は、国立では約50万円、私立では約70万円です。

奨学金や日本学術振興会の特別研究員(学振DC)に採用されると、生活費に値するものは支給されます。しかし、学振の採択率は約2割であり、全員がもらえるわけではありません。金銭的不安を理由に博士課程進学を諦める人も少なくないというのが現状です。

なお沖縄科学技術大学院大学(OIST)では、博士課程の学生は給与をもらいながら研究できます。OISTのみでなく他の大学でも博士課程の学生に給与が支払われるようになって欲しいです。

日本の制度とのマッチング

修士課程と博士課程が分かれている

ヨーロッパでは、日本と同じように修士課程と博士課程が別カリキュラムです。そのため、日本で修士号を取った後に、そのままヨーロッパの博士課程に進学できます。

ヨーロッパや日本では、学部卒業→修士課程→博士課程という流れです。博士課程の期間は3〜4年が多く、ベルギーでは原則として4年です。日本では博士課程を3年で終える人が多いです。

アメリカの場合、博士課程の前期として修士課程が組み込まれており合計で5〜6年かかります。すなわち、学部卒業→博士課程または学部卒業→修士課程→博士課程という流れです。

学部卒業後にアメリカの博士課程に進学すると、学部卒業から博士号取得までにかかる期間は日本やヨーロッパと変わりません。しかし、修士号を取った後にアメリカの博士課程に進学すると、修士課程をやり直すことになります。
(日本の修士課程で専門知識を深めてから、アメリカの博士課程で体系的に学び直すことも効果的だと思います。)

ヨーロッパ博士課程の魅力は、修士在学中に博士課程に進学したいと思い立った人や修士号をすでに持っている社会人が修士課程をやり直すことなく進学できることです!

一年中いつからでもスタートできる

ヨーロッパの博士課程には春入学や秋入学というような決まった入学時期はなく、一年中いつからでも開始できます。

そのため、修士課程の後に期間を空けることなく博士課程を始められます。私は3月に修士課程を終え、4月に入学の最終手続きを行い、5月に博士課程をスタートしました。

入学時期のみでなく出願時期も一年に一度ではありません。学生を一年中募集しており、興味のある研究室にいつでも出願できます。博士課程への出願に際して、共通試験や大学固有の入学試験を受ける必要はありません。合否は志望理由書などによる書類審査と面接で決まります。

修士論文の研究を行いつつ、社会人であれば毎日の業務を行いつつ、日々の研究成果を生かして博士課程の出願を行うことができます。そして合格後はギャップ期間を設けることなく博士課程を開始できます!

研究室の構成

博士学生とポスドクがメインである

ヨーロッパの研究室は、主に博士課程の学生とポスドク(博士号を取得した後の研究員)で構成されています。

ヨーロッパの修士課程は座学が中心であり、修士論文のために半年から一年ほど研究をしますが、あくまで研究室の一時的なメンバーという扱いです。

一方、日本の修士課程では研究がメインであり、研究室は主に修士課程の学生と学部4年生から成り立っています。博士学生やポスドクが一人もいない研究室も数多くあります。

ヨーロッパ型と日本型のそれぞれに良い点はありますが、博士課程に在籍する上でヨーロッパでは身の周りに博士学生がいない孤独を感じることなく研究できます。また、博士号を有するポスドクに囲まれて研究ができることも魅力的です。

世界中から人が集まる

いろいろな国の人と一緒に研究生活を送れることも大きな魅力です!

ヨーロッパの研究室には世界中から学生が集まっており、研究室の公用語は英語です。博士課程進学において、現地のヨーロッパ系の公用語を習得している必要はありません。

私の所属している研究室では約半数がベルギー人で、残り半数が留学生です。

まとめ

この記事ではヨーロッパ博士課程の3つの魅力を紹介しました。内容を以下にまとめます。

  1. 給与をもらって経済的・社会的に自立しながら博士課程で研究ができる。
  2. 修士課程と博士課程が別カリキュラムであるため、修士課程をやり直すことなく博士課程に進める。
  3. 様々な国から集まる博士学生やポスドクと一緒に英語で研究ができる。

最後まで読んでいただきありがとうございました!