この記事では、ヨーロッパ博士課程への合格が決まってからの入学手続きおよび渡航手続きのスケジュールを紹介します。
合格後のスケジュール
時期 | 内容 |
---|---|
9月末 | PhDポジションへの合格 |
10月末 | 留学先大学からの条件付き入学許可* |
12月 | 留学先大学からの仮の入学許可書* |
12月末〜3月 | VISA申請用の書類準備 |
3月上旬 | 日本の修士課程を修了し、留学先大学へ修士号を送付* |
3月下旬 | 留学先大学からの追加授業という条件付きの正式な入学許可書* |
4月上旬 | 留学先大学からの大学との雇用契約書* |
4月中旬 | VISAの受け取り |
4月下旬 | ベルギーへ到着 |
4月下旬 | 追加授業免除の連絡* |
5月 | 博士課程のスタート! |
留学先大学からの正式な入学許可
以前の記事で紹介したように、修士2年の9月末にベルギーのKU Leuvenの研究室からPhDポジションのオファーをいただきました。
この時点では教授とのメールによる連絡のみであり、大学からの正式な入学許可書(Admission letter)を受け取っていませんでした。
条件付きの入学許可
教授の連絡から約1ヶ月後、10月末にKU Leuvenから条件付き入学許可の連絡がきました。
この条件とは修士号の取得です。ヨーロッパの博士課程へ進むには、原則として修士号を取得している必要があります。しかし、当時はまだ修士課程に在学中であり、修士号を取得するまでは正式な入学が認められないと説明されました。
このように修士課程在学中に博士課程の入学手続きを行なう場合は、修士号を受け取るまで正式な入学許可を受け取れない可能性があります。
VISA申請のための仮の入学許可書
12月末に仮の入学許可書を受け取りました。10月の条件付き入学許可はメール本文による連絡でしたが、ここではPDFファイルとして受け取りました。
この入学許可書はベルギーのVISA申請に必要な書類です。修士号取得という条件付きのままですが、早めにVISA申請手続きができるようにとKU Leuvenが仮の許可書を発行してくれました。
実際には後ほど紹介する雇用契約書をKU Leuvenから受け取るまではVISAを申請できないのですが、仮の入学許可書を受け取ってからVISAに必要な書類を用意し始めました。
修士号を留学先大学へ送付
3月に日本の大学にて修士課程を終え、修了証書(Diploma)をKU Leuvenへ送付しました。
しかし、ここで新たな問題が発生しました。KU Leuvenの博士課程の入学審査会議は月に一度しか行われないというのです。3月10日にDiplomaを送付したものの、次回の会議は3月25日とのことでした。したがって、4月に博士課程を開始するという予定は完全に頓挫しました。
正式な入学許可、しかし新たな条件付き
3月の入学審査会議の結果、正式な入学許可をいただきました。これで一安心と思ったのも束の間、正式な入学許可には新たな条件がついていました。
新たな条件とは、博士課程在籍中に追加の授業を受けるというものでした。追加授業については後ほど詳しく説明します。
留学先大学との雇用契約
正式な入学許可を受け取った数日後に、KU Leuvenとの雇用契約書を受け取りました。この書類は、ベルギーの学生VISA申請に必要な財務証明書です。
雇用契約書を受け取り、VISA申請に必要な書類が全てそろいました。VISAの申請手続きについては、別の記事で紹介します。
追加授業の免除申請
正式な入学許可に付いてきた追加授業について説明します。
博士課程で追加授業?
KU Leuvenの博士課程の入学条件には「修士号を有する」だけでなく「修士課程で120 ECTS相当の単位を取得している」ことも必要です。ECTSはヨーロッパの単位制度です。例えば、KU Leuvenの修士課程では120 ECTSの取得が要求されています。
しかし、私は日本の修士課程で30単位しか取得しておらず、120 ECTSを満たさないと判断されました。
すなわち、修士号は取得しているため正式な入学許可を認めるが、120 ECTS単位取得を満たしていないため、博士課程在籍中に不足分の単位を追加で取得する必要があるとのことです。
KU Leuvenの指導教員の提案
KU Leuvenの指導教員は、私の修士の取得単位数は30単位であるものの、120 ECTSを満たしていると考えており、30単位をECTSに換算してほしいとお願いされました。
というのもKU Leuvenおよび私の在籍した慶應理工学部の修士課程はどちらも2年間のプログラムです。KU Leuvenでは授業がメインであり、多くの単位を取る必要があります。一方、慶應理工では修士論文の作成に大半の時間を費やすものの、修論の単位は成績表では10単位にしか満たないのです。
理工学部の学事にいきさつを説明し、修士課程の30単位をECTSに変換していただけないかと連絡しました。
しかしながら、慶應理工の単位をECTSに換算した前例がなく、カリキュラム上30単位および修士論文をECTSに換算することはできないとの回答を得ました。
学事および修士課程の指導教員の協力
ありがたいことに対応してくださった学事の方は、単位変換はできないものの、何か方法はないかと学習指導の教授と相談してくださいました。その結果、修論に向けた取り組みには実験以外にも教員とのディスカッションなどが含まれており、また修論に費やした時間的にも、慶應の修士課程は120 ECTSを満たしているという結論に至りました。
学事の方から指導教員に修士課程での私の取り組みに関するレターを作成してもらうことで、その内容をECTSに換算できるのではないかという提案をいただきました。
指導教員に事情を伝えたところ、快くレターの作成を引き受けてくださいました。年度が切り替わる忙しい時期に、大学を去ったばかりの私に真摯に対応していただき学事の方および指導教員には感謝しかありません。
このことをKU Leuvenの指導教員に伝えると、次回の博士入学審査会議が行われる4月15日までに用意して欲しいとの連絡をいただきました。忘れていました。審査会議は毎月一回です。一つずつ問題を解決しても一向に博士課程をスタートできそうな目処が立ちません。4月15日に間に合うように、レターを送付していただき、あとは会議の結果を待つだけです。
追加授業の免除
追加授業免除に向けた連絡をしている間にVISAを受け取りました。VISAを取得した後、すぐに翌週の航空券を購入し、ようやく出国の時が来ました。ただし、出国の段階では、追加授業が免除されるか分からないままでした。
ベルギーへ到着した翌日に、追加授業の免除という連絡を受け取りました。これにてようやく晴れて条件なしで無事に博士課程を始めることができました。
日本の大学を卒業して海外の大学へ進学する場合には、ぜひ単位互換について早めに確認し、必要であれば日本の大学の学事や指導教員と相談することをおすすめします。
まとめ
この記事では、PhDポジションのオファーを受けとってから博士課程開始までの入学および渡航手続きの流れを紹介しました。
修士課程在学中に博士課程の入学手続きをおこなう場合は、修士号を受け取るまで正式な入学許可をもらえず、手続きが思ったように進まない可能性があります。
また、日本および留学先の大学とでは単位の計算方法が異なる場合があるため、単位変換について早めに相談することをオススメします。