この記事では、大学院留学に必要なStatement of Purpose(SoP)、いわゆる志望理由書の書き方を紹介します。
履歴書(CV)に投稿論文や受賞歴といった実績を記載できるのが理想ですが、そうでない場合はSoPでアピールするしかありません。私自身、投稿論文と受賞歴のいずれもありませんでしたが、以下で紹介する構成を活用して、ベルギーのKU LeuvenのPhDポジションのオファーをいただきました。
SoP
SoPとは、Statement of Purposeの略称で、要するに志望理由書です。Cover LetterやMotivation Letterと表記される場合もありますが、書くべき内容は変わりません。
A4サイズで1〜2ページ程度の分量で、募集要項に明記されていることが一般的です。
エッセイの構成
下記の5パラグラフの構成で作成しました。
- Introduction
- Body 1
- Body 2
- Body 3
- Conclusion
過去、現在、未来と時系列に基づく書き方もありますが、私は大学でお世話になった英語教員のアドバイスを参考に、上記のフォーマットで書きました。
ちなみに、学部時代の交換留学の志望動機にも同じ構成を使用し、学内選考を通過し第一志望の大学に留学できたという実績もあります。
Introduction
冒頭で「自分はXXのために〇〇研究室で研究したい」というThesis statementを書きます。続いて、その論拠を3つ提示することでBodyで述べる内容を簡潔に示します。
採用者は多くの応募者のSoPに目を通すため、イントロが魅力的でなければ、本文を読まれないまま不合格になる可能性があります。したがって、最初の1、2文で「あなたのラボで研究がしたい旨とその理由」を述べ、続きを読みたいと思わせる必要があります。
イントロの後半では「なぜその大学・研究室なのか」という理由を3つ提示します。この3つの理由が、それぞれ本論であるBody 1、Body 2、Body 3に該当します。
Body
Introductionで提示した3つの理由について、1段落ずつ深掘りしていきます。
各パラグラフの冒頭では、イントロで示した論拠をより詳細にしたTopic sentenceを書きます。
論拠としては、例えば「研究テーマ・プロジェクトへの興味」「大学・研究室への興味」「自分の能力で研究室にどう貢献できるか」が挙げられます。
SoPの核となる部分ですが、冗長になりすぎないように気をつけます。これまでの研究やこれからの興味などの情報を適切な分量とわかりやすい構成で書き、忙しいラボ主催者がストレスフリーに読めるように工夫します。
Conclusion
基本的にはIntroductionの言い換えです。
冒頭にはConclusion sentenceを書きます。これはイントロのThesis statementをパラフレーズした文章で、読み手に再度「自分はXXのために〇〇研究室で研究したい」という旨を印象付けます。
続いてBodyで述べた3つの内容を簡潔にまとめ、その後に全体のまとめとなる一文を書きます。
最後にいつから博士課程をスタートできるかを書きました。これについては、正直なところSoPで書くべき内容であるかはわかりません。SoPを提出する時のメールや応募フォームでコメントできるのであれば、SoPに含めなくて良いと思います。
意識した点
Why Us?とWhy You?
「留学入試エッセー理系編」という書籍で言及されているポイントであり、常に「なぜあなたの研究室なのか(Why Us?)」「なぜ他の応募者ではなく私を採用すべきか(Why You?)」を意識することです。
自分のこれまでの研究や強みを詳細に述べていても、その経験や能力がラボにどのような新しい価値をもたらすかが書かれていなければ効果的ではありません。
博士課程で自分が何を得たいのかという自分中心の話だけではなく、自分を採用することで相手が何を得するのかを書くことがポイントです。ラボの強力な戦力になると期待させるような内容を書き、面接で話をしてみたいと思わせる必要があります。
紹介した書籍には理系編のみでなく文系編もあります。しかし、アルクのウェブページによると残念ながらいずれも販売終了しているようです。私は地元の図書館で借りていました。
定型文を使わずオリジナリティのある内容
定型文を使わずに、応募する研究室ごとに内容を変えて自分の言葉で書くようにします。
応募先が変われば、なぜこの研究室なのかというWhy Us?のみでなく、自分がどう貢献できるかというWhy You?も変わります。提出先に応じてエッセイはその都度ゼロから考えます。ただし、エッセイの5パラグラフ構成は変えませんでした。
作り方次第では学校名や研究室名のみを書き換えることでSoPを使い回すことも可能です。しかし、不特定多数の教授に送れるような内容は書類審査の段階ですぐに落とされる可能性が高いです。
採用者はかなりの数の応募者のSoPに目を通します。あなたのラボに興味があるとだけ書くのではなく、面白いと感じた具体的な論文や応募先独自の技術に言及するようにします。
具体的なスキルや成果
自分のスキルや成果はCVに記載しますが、特にアピールしたいものをピックアップしてSoPに書くことで、採用者の記憶に残るようにします。
どれだけ応募者の熱意や能力をアピールしていても、その根拠が欠けていると主張が弱くなります。
投稿論文や受賞歴があればそれをSoPに含めて、主張を裏付けるのが有効です。ただし、私のようにそういった実績がない場合もあります。その際には、これまでの研究や留学、インターンなどの経験を関連づけるようにします。
例えば、私の専攻は実験系の化学であるため、修士の研究で扱っている材料や実験装置を簡潔に書くことで、専門分野のスキルを補足しました。他にも、学部時代の交換留学の経験に言及し、国際的な環境での研究に自信があると書きました。
添削について
構成や流れについては、お世話になっている英語の教授に一度見ていただきました。
文法については、Grammarlyを使っただけで、ケチって添削サービスは利用しませんでした。
誤字や脱字があると、いい加減な人間という印象を与えてしまいます。何度も読み直し、可能であれば他の人にチェックしてもらうことで、スペルミスなどを防ぐようにしました。
まとめ
今回は博士課程留学の志望理由書の書き方を紹介しました。
エッセイの構成はIntroduction、Body 1、Body 2、Body 3、Conclusionという5パラグラフです。イントロでは、冒頭でエッセイの主旨を述べ、論拠となる3点を示します。本論では、3つの論拠に1つずつ焦点を当てて詳細かつ簡潔に書きます。最後の結論ではイントロの言い換えと本論の要約をします。
意識する点としては、自らをアピールする部分で、「どう貢献できるか」「私を選ぶとどういうメリットがあるか」という視点で書くようにします。また、複数のラボへ手当たり次第に応募しているように見られないよう、定型分は使わずに具体的なポイントに言及するようにします。